水不足について考える
このコーナーでは、我々に欠かすことの出来ない水資源について真剣に考えてみました。
地球全体の人口は、経済の発展とともに増加の一歩を辿っております。 しかしながら、我々の生活レベルが向上していく中、水資源の供給においては、その需要に追いついていないのが現状です。 特に中近東やアフリカ諸国においては、慢性的な水不足に見舞われており、2025年には、世界の約半数の国が水不足に陥るとも推測されています。
さて、我々の住む沖縄県はどうでしょうか?
経済成長、人口増加、観光客の増加、様々な成長要因により、沖縄県の水資源需要も大きく伸びています。 昭和47年と平成11年の一日当たりの水需要を比較すると、なんと28年間で2倍以上に膨れ上がっているのです。
過去を振り返ると、この膨れ上がった需要と供給のバランスの崩れに加え天災も影響して、水不足に悩まされた苦い経験がよみがえります。
特に昭和56年~57年の渇水時には、実に326日間にわたる給水制限を余儀なくされました。 最近では、平成3年の空梅雨とかんばつの影響を受け、6月~9月の間に、24時間断水を含む64日間にわたる給水制限が実施されたのです。
沖縄の皆様は、実生活レベルで体感されていることですので、言うまでもございませんが、やはり、水資源の供給が追いついていないのが実情であり、天候、天災に左右されない水資源の確保は、沖縄県の重要な課題となっています。
世界レベルで見た場合、注目されているのが、海水から真水を精製し、生活用水や工業用水として利用する「海水淡水化」の手法であり、各国でこの取り組みが実施されています。 アメリカ、フランス、韓国、中国、インド等の原子力技術国では、淡水化事業に原子力技術を利用し、官民一体となった取り組み体制を敷いています。 非核保有国である日本は、この点で先述の国々と原子力技術を用いた「海水淡水化」に対する意識に差があるようですが、淡水化事業への原子力技術の利用が妥当であるのかどうかを検討する「海水の淡水化に関する検討会」を2006年1月に設置されました。
沖縄県においては、原子力を利用せず、電力を使用した逆浸透法(RO法)という手法を用いた技術を採用し、水資源確保のため、海水淡水化事業に取り組んでいます。 逆浸透装置内の海水側容器に、浸透圧より大きな圧力を加えることにより、海水側から半透膜を通じて、淡水側容器に淡水が押し出されるというもので、この現象を逆浸透圧といいます。この技術は、省エネルギー技術としても脚光を浴び、国内外で広まりつつある手法です。
逆浸透法には、下記のメリットが挙げられます。
- 沖縄県本島を取り間囲む身近で、尚且つ無尽蔵にある海水から季節や天候に左右されることなく水の確保が可能である。
- プラント設備が主体の施設建設であり、ダム建設と比較して工期が短く済む。
- プラント施設はコンパクトであり、ダム建設と比較してスペース的に小規模で済む。
- 消費地の近隣に設置可能なため、導送水施設の距離が短くて済む。
- 電力を用いる技術であるため、原子力技術と比較して格段に安全である。
沖縄県の海水淡水化施設からは、一日あたり4万m3の淡水を生産していますが、このボリュームの淡水を精製するには、10万m3の海水を取り込む必要があります。そして、淡水生成後、塩分濃度5.8%の濃い海水、6万m3が、周辺海域に排出されています。
塩分濃度3.5%の自然海水そのものと、排出海水地域に与える海生生物への影響が懸念されますが、水中拡散放流という手法を採用することにより、問題がないことがシミュレーションにて実証されています。また、海水淡水化施設のある海域では、黒潮海流が沿岸に平行に流れており、黒潮海流も手伝って、より安全な海水淡水化事業となっています。
琉穂建設工業では、逆浸透法を利用した沖縄県の海水淡水化事業に積極的に参加し、各企業とともに沖縄県の皆様のための水資源確保に貢献します。
<参考資料>
- 水源と施設:沖縄県企業局
- 海水淡水化の現状と原子力利用の課題(調査研究報告書):(社)日本原子力産業協会